空の下を歩く

旅と日常。空の下を歩きましょう。胃がん闘病記としてはあまりお役にたてないかも。

母に会いに

 週末、実家に帰ってきた。新幹線で数時間。

母は膵臓がんを患っている。手術からもう2年になる。予後が悪いと言われる膵臓がんだが、80歳をいくつか過ぎても頑張っている。前向きなひとだから、がんもなかなか進行しなかったのかも知れない。ただ、もう抗がん剤はやめた。肺にも胃にも転移している。そういうことだ。

 同じ市内に、私の妹と弟夫婦が住んでいるので、任せっぱなしである。心苦しいがどうしようもない。私ががんになってしまったから、なおさらだ。特に妹が中心になってケアマネージャーさんや訪問看護師さん、がんセンター及びかかりつけの医師などと連携をとって、いろいろしてくれている。本当にありがたい。

 母の体調が比較的良かったので、妹と3人で海の見えるレストランに食事に行った。家では二人で紅茶を飲みながらいろいろ話した。母は楽しそうだった。私も楽しかった。 

 実は母が苦手だった。母は言葉のきつい人で、私は若いころからずいぶん衝突してきた。子供のころは叱られてばかりだった。大学に合格して、実家から脱出できることがうれしかった。結婚に反対され、結局母は折れたが、式の当日まで口喧嘩した。私の夫ともしばらく折り合いが良くなかった。本当は愛情深く、ずっと心配してくれていたことはわかっていたが、きつい言葉を言われると言い返してしまいたくなり、それが疲れるから距離を置きたくなったりした。

 時を経て、ここしばらくは穏やかな関係が続いている。我が家は昨年長い社宅暮らしに別れを告げてようやく「マイホーム」を持つことができたのだが、それをことのほか喜んでくれた。私の夫についても、昔のように文句を言うことはなくなり、私たち夫婦が仲がいいことを喜んでくれている(父はとても自己中心的な人間なので、母はずっと苦労してきた)。「あんたは旦那さんとこどもたちに恵まれたね。良かったね。」と言われた。

 別れ際、めったにしないハグをした。私より背の高い母だったが、すっかり痩せて小さくなっていた。5月に私は入院して手術。もしかしたら、これが今生の別れになるかもしれない。涙が出た。母にも父にも、私のがんのことは話していない。とても話せない。母が一日でも長く、苦しくなく過ごしてくれるよう願うばかりだ。


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